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最新号に寄せて

 

日本の政局において、このところ最大のインパクトを残した9月30日投開票の沖縄県知事選。自民・公明などの推薦を受けた佐喜真淳氏に対し、米軍辺野古新基地阻止に全力を尽くした翁長雄志前知事の後継者である玉城デニー氏が8万票の大差で圧勝しました。この選挙がどういう意味を持っているかを考えるうえで、まず振り返りたいのが、野党統一候補を自民・公明推薦の花角英世知事が破った今年6月の新潟県知事選です。このときの自民・公明の選挙戦術といえば、まず東京電力柏崎刈羽原発の是非を争点にしないために、野党候補と似たような政策を掲げると同時に、公明党の支持母体である創価学会をフル稼働させたことでした。そこでハンドルを握ったのが菅義偉官房長官で、彼と太いパイプを持つ創価学会の佐藤浩副会長のコンビが中心となり、自公で合同して企業団体や創価学会員に期日前投票などを人海戦術で要請しています。2月の沖縄・名護市長選で、圧倒的優位とされた基地反対派の前市長をこの戦術で自民・公明が破ったことから「名護市長選方式」とも言われています。

 

この名護市長選、新潟県知事選と続いた流れは、要するに自民党と公明党が組んでいる限り、選挙には負けない、という“不敗神話”を築き上げていました。それが沖縄県知事選で崩れ去ったということになります。その敗北の理由は、自民党が自民党であるがため、公明党が公明党であるがため、といえるものでした。現地レポートや、創価学会の内部事情の分析とともに、本誌で詳細に報告を行なっています。
 
また、10月26日には辺野古基地建設の是非を問う県民投票条例が県議会で可決されました。基地建設にイエスかノーかの二択で答えるものですが、これに自民党と公明党は「やむを得ない」「どちらとも言えない」を加えるように求めましたが否決されています。このあたりは、今の公明党および支持母体・創価学会の苦悩を示す、面白い話といえます。
 
一方、玉城新知事を誕生させた「オール沖縄方式」ですが、来年夏に予定されている参議院選挙をはじめ、今後の選挙で活かされるかというと、そう簡単なことではないように思います。結局のところ、勝利につながった一番の要素は、米軍基地問題が本当に深刻だ、という地元の人々の危機感です。では、全国的に同様の危機感を共有されるテーマとは何か。私は大企業や富裕層優遇の税制、つまり消費税の問題と原発再稼働の問題が、それにあたると考えています。あとは、野党側が中途半端なものでない、消費税なら廃止、原発なら即ゼロといった、わかりやすい主張を打ち出せるかが、問われているということです。これは同時に、人々の政治への無関心に対抗するものでもあると思います。
 
消費税については、10月15日に安倍晋三首相が「10%」を表明すると、マスコミは増税を既成事実として軽減税率の話題に終始しました。本来問うべきは増税の是非であり、消費税とは何か、ということであるはずです。特定秘密保護法や安保法、共謀罪法、カジノ法、働き方改革関連法など、強行採決で成立した法案についても、通ってしまえば報道はピタリとやみます。原発などは、再稼働された事実を伝えるのみ。私は日本のマスコミの最大の欠点は、既成事実に弱いということだと思っています。そして“そもそも”を問い続けられるのが、雑誌の自由さであり、魅力のひとつだと考えています。今月号も、ぜひご一読ください。
 

「紙の爆弾」編集長 中川志大