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最新号に寄せて

 

「国民のために働く内閣」と銘打って「携帯電話料金の引き下げ」「不妊治療の保険適用」「行政手続きのデジタル化(ハンコの廃止)」と、わかりやすい政策を打ち出した菅義偉首相。何が「安倍政権の継承」かといえば、「もり・かけ・桜は終わった問題」との姿勢を指しているのでしょう。いまさら言うまでもなく、政治の私物化と、そのための公文書改ざんまで発覚した事件です。そして結局、真相が明らかにされなかったために、今も刑事・民事で裁判が争われています。それらをクリアにしてこそ新政権のスタートだろうと思うのですが、もちろん、11月号でその経緯をレポートしたとおり、安倍晋三前首相から“禅譲”を受けた菅首相は、そういうわけにいきません。「議事録は最も基本的な資料。その作成を怠ったことは国民への背信行為」との著書の削除部分が、かえって菅首相という人を雄弁に語っているようです。
 
 その人物像については、今月号の本誌をぜひお読みいただきたいところですが、もともとペーパー棒読みの“想定問答”しかできない小心ぶりが、周囲から指摘されていたようです。それは、異常なまでのメディア規制強化や、首相就任から40日目という「異例の遅さ」の所信表明演説からも垣間見えています。自民党総裁選で「政治の空白は許されない」と言い、就任会見では「今、取り組むべき最優先課題は新型コロナ対策」と話していたのですが、臨時国会はえらく遅いスタートとなりました。
 
その所信表明演説の内容で、もっとも注目を集めたのが、「2050年脱炭素宣言」でした。しかし、すぐ後に、省エネルギー、再生可能エネルギーとともに、「安全最優先で原子力政策を進めることで、安定的なエネルギー供給を確立する」という言葉が続きます。もともと脱炭素政策は、国内の大手電力会社から反発を招いていただけに、彼らを納得させつつ脱炭素を進めるためには原発再稼働しかない、という論理がすでに透けて見えます。これも本誌11月号をご参照いただきたいのですが、2011年の福島原発事故以降、当時の民主党政権は、不十分とはいえ2030年を目標として、原発ゼロ政策を進めてきました。それが自民党の第2次安倍政権になり、当時は化石資源依存度の低下・低減、という言葉で、ベースロード電源における原発の比率を20〜22%に固定する、という目標が立てられました。安倍政権が「原発ゼロ」を取り消し、菅政権が2050年脱炭素化宣言によってさらに上書き、塗りつぶしてしまったかたちです。
 
 今月号では、そんな菅首相の人物像と政策内容を分析すると同時に、彼にまとわりつく“人脈”にも争点を当てました。また、東京五輪を巡っては、競泳男子の代表・瀬戸大也に日本水泳連盟が下した“処分”について、真相に迫っています。そこに立ち現れてくるものこそ「東京五輪の正体」と言っても過言ではありません。また、安倍晋三前首相の退陣劇の裏側についても、あらためて深掘りしました。今月号も、ぜひご一読ください。
 

「紙の爆弾」編集長 中川志大