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2017年11月号に寄せて

 

前号10月号の特集「安倍政権とは何だったのか」では、安倍政権下で変えられてしまったこと、現在の日本が抱える課題についてまとめました。そして11月号では、“安倍後”をみるうえで、“ポスト安倍”として存在感を高めていた小池百合子東京都知事に注目し、公明党との関係を中心にその政治戦略を、関東大震災朝鮮人虐殺で追悼文送付を見送ったことからその思想的立ち位置を、築地市場移転問題、東京オリンピック・パラリンピック問題など東京都政からその政治手法を、それぞれ分析しました。
 
そうして立ちあがった特集「小池百合子で本当にいいのか」。制作が大詰めとなったところで、小池氏が「希望の党」代表に就任。期せずして、その内容の重要性が増すことになりました。本誌校了後も政局の変化が毎日報道されており、まさに、政策の中身について、人々に考える隙を与えないかのようです。そうしたなかにあって、本特集の記事3本は、それぞれ腰を据えて考えられる内容となっています。特に、築地市場移転問題で東京都のプロジェクトチームの専門委員を務めた建築エコノミスト・森山高至氏の論考は、都政の現状だけでなく、今回の選挙においても先を見通したものといえます。森山氏は小池氏を、働き蜂を従えて巣を形成する「女王蜂」に例えました。その後、巣はどうなるのか……。ぜひお読みください。
 
小池氏は党代表就任にあたり、消費税増税凍結と、原発ゼロを掲げました。まさにこの2つは、本誌レポートに登場する市民団体の選挙に向けた提言と重なります。ただし、本誌の場合は消費税廃止、原発即時ゼロですが。いずれにせよ、政局オンリーの小池氏が、この2つに着目したことは注目すべきだと思われます。要するに、市民生活の保全と脱原発。これが国民的関心事の主流だということです。
 
ともあれ問題は、この衆院総選挙をどうするのか、です。“打倒安倍政権”を達成できるのか。共謀罪や安保法制をはじめとした“悪政”を廃止し、あるべき日本を取り戻せるのか。本誌が選挙に直接的影響を与えることはありませんが、政局ばかりにとらわれざるをえないマスコミからは離れて、モノを考えるきっかけにしていただければと思っています。
 
もちろん、解散・総選挙の話題ばかりではありません。国連スタッフとして世界の紛争処理、武装解除を担当した東京外国語大学・伊勢崎賢治教授の論考では、自衛隊の海外派兵がもつ根源的な意味について、解説がなされています。また、10月に著書『不寛容という不安』(彩流社)を上梓する真鍋厚氏は、安倍政権が推し進める「明治150年」事業に絡めて、明治期に日本で行なわれていた残虐行為についてレポート、「本当の明治時代」を垣間見ることができます。関東大震災での朝鮮人虐殺が「忘れ去りたい歴史」とすれば、こちらは「そもそも記憶されなかった歴史」ということができるでしょう。ぜひご一読ください。
 

「紙の爆弾」編集長 中川志大