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最新号に寄せて

 

 
菅義偉新首相が誕生。さっそく、携帯電話の料金値下げ宣言をはじめとした政策アピールにいそしんでいます。内閣支持率70%は“ご祝儀”にしてもできすぎで、その裏には今月号で指摘しているようなカラクリがあります。この高支持率で、吹きかけた“解散風”も収まりを見せつつあるようですが、一方で「もりかけ桜」の再調査を求める世論は50%を超えています。菅新政権を歓迎しながら疑惑の再調査を求める矛盾をどう考えるべきか。少なくとも、現在の支持率は何の参考にもならない数字と言って差し支えないものと思われます。
 
思い返せば2012年末の第二次安倍政権スタート時、人々には“腹痛トンズラ退陣”の記憶がまだあり、頼りない安倍首相と比べればなんとなく事務処理能力の高そうな菅官房長官が“影の総理”ともてはやされました。その意味では、菅官房長官に好印象を持っていた人ほど、「安倍政権の継承」という発言に違和感をもったのではと思います。そして“ポスト安倍”としては世論調査で3%しか名前を挙げなかった菅氏が、石破茂・元自民党幹事長や小泉進次郎環境相を押しのけて急浮上。自民党内の派閥にかつがれて、総裁選に圧勝しました。ついでに言えば、新型コロナウイルスの無策で批判を集めていた安倍前首相の支持率も急上昇。違和感を覚える前に、迅速に“禅譲”が完了したわけです。もっとも、ここまでうまくいくとは、仕掛けた側も考えていなかったのではと思われます。
 
そこに効果的な役割を果たしたものこそ、安倍前首相の“難病”による辞任と、菅首相の「叩き上げエピソード」でした。安倍前首相の“病状悪化”は、第一次退陣の際にはあった医師の立ち合いも診断書の公表もなく、2週間後には官邸でワイン片手にコース料理を完食した、との報道もあります。一方の菅首相も、秋田県の雪深い農村から始まる立身出世物語は、フェイクが多分に含まれていることが週刊誌報道などで明らかになっています。本人もいつのまにか、ホームページで「集団就職」の言葉を消していたくらいなのですが、それでもマスメディアは、「苦労人」のイメージを何度も人々に刷り込みました。それは、このエピソード自体が、問題だらけの安倍前首相から、ただの「令和おじさん」だった菅首相に、スムーズに移行するうえで必要だったとみるべきでしょう。そこに疑問を持った野党議員が、菅首相に議員になった経緯について国会で説明を求める発言をすると、なぜか批判を受けて“炎上”する騒動も起きています。しかし、日本の政治の方向性を決めた出来事である以上、メディアには真相解明の責任があると思っています。
 
 そして、安倍政治の総括ももちろんメディアの責務です。今月号では経済・メディア・労働・治安立法・原発の5つのテーマを採り上げました。今後も本誌の主要テーマとして、継続して分析を続けていきます。メディアコントロールによって継承された政権だけに、記憶の改ざんを迫る動きは続いていくものと思われます。それに対抗するために、まずは安倍政治を記憶し、「日本を取り戻す」作業が求められるものと考えています。今月号もご一読をお願いいたします。
 
  

「紙の爆弾」編集長 中川志大