月刊誌『紙の爆弾』は毎月7日発売です。

最新号に寄せて

 

 
優生保護法の下、知的障害者や精神障害者らに対して行なわれていた強制不妊手術(優生手術)。この問題は、残酷な優生手術が、さほど古くない時代まで行なわれていたという衝撃が、まずありました。今年初頭に、被害者による賠償請求訴訟が始まって以降、主に裁判をめぐって報道が続いていますが、優生保護法がどういうもので、それが日本社会に何をもたらしたかという根本的な問いかけが欠如している、と指摘するのは精神病理学者の野田正彰氏です。野田氏は精神科医となった当初からこの問題に取り組み、1973年、翌74年に「朝日ジャーナル」に掲載された論文は、大阪市議会で採り上げられ、当時の教科書の記述が変わるきっかけになるなど、反響を呼びました。
 
にもかかわらず、私たちの多くは今回の報道をもって、優生手術の存在を知ることになりました。そして、「日本でもそういう時代があった」というのがそのときの感想だったと思われます。これ自体が認識の甘さであり、そもそも優生保護法は“そういう時代”の結果ではなく、精神科医たちにより作られたものであり、忘れ去られたのではなく隠蔽されたというのが正確なところです。誰が、何のために、どうやって優生保護法を作って優生手術を行ない、その事実を隠ぺいしたのか。本誌で野田氏が明らかにしています。
 
9月30日投開票の沖縄県知事選では、翁長雄志県知事亡き後の沖縄をいかに守るかが問われています。翁長氏が背負ってきたものはあまりに重く、米軍基地問題そのものとともに、暴走する安倍政権に立ち向かう旗手として、日本全国から希望の存在とされてきました。それ自体、沖縄への一種の押し付けではないかとすら思えるほどです。そうであれば、今後を問われているのは日本全体であり、いかに沖縄を支援できるかだといえるでしょう。そう考えて本州に目を向けると見えてくる問題のひとつが、岩国米軍基地です。在日米軍再編で“アメ”を受け取った岩国市がどうなったか、前号で岩国への空母艦載機受け入れに抵抗した井原勝介元市長が解説しました。今月号ではさらに、岩国市長の人物像とともに深く掘り下げています。
 
東京医科大学の入学試験における“女性差別”問題が世を騒がせていますが、“男性優位”は大学医学部だけではありません。顕著な職種のひとつがマスコミ記者ですが、実情がどうなっているのか、大手新聞・通信社への取材をもとに分析しています。社によってトーンに違いが見えるのは、非常に興味深いものです。また、アジア大会もあって、東京五輪「2020」への煽りが最高潮を迎える裏で、市民への統制を強化する条例等がつくられようとしています。また、アマチュアボクシングで山根明前会長の独裁ぶりと追放劇が全国的な話題となりましたが、本誌ではボクシングにとどまらない日本のスポーツ界全体が持つ構造的な問題について解説しています。もちろん、“無風”とされる自民党総裁選の裏側もレポート、いずれも必読の内容です。今月号もぜひご一読ください。
 
 
 

「紙の爆弾」編集長 中川志大